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戦略家・錦織圭、戻らぬ感覚と新たな引き出し 13カ月ぶり四大大会を復調の契機に [戦略家・錦織圭、戻らぬ感覚と新たな引き出し]

戦略家・錦織圭、
戻らぬ感覚と新たな引き出し 
13カ月ぶり四大大会を復調の契機に



戦略家・錦織圭、戻らぬ感覚.GIF
全仏オープンの前哨戦では1勝のみに終わった
錦織圭。果たして全仏ではどのような
プレーを見せてくれるか
photograph by Getty Images
(photograph by Getty Images)





錦織圭が1ゲームも取れずにセットを
落としたのは、2018年ATPファイナルズでの
ケビン・アンダーソン戦以来の屈辱だった。

第2セットは盛り返したが、
世界ランキング22位の
クリスチャン・ガリンは隙を見せず、

0-6、3-6のストレート負け。

全仏前哨戦のハンブルクは
初戦敗退に終わった。

「一戦ずつやるだけ。
たくさんテニスができればいい。
(結果についての)自分への期待はない」
と臨んだ大会だった。

右ひじの手術と
新型コロナウイルス感染を経て、
2週前のキッツビュールで
約1年ぶりにツアー復帰。

次週のローマで復帰後の
初勝利を挙げたが、
続く2回戦で18歳の
ロレンツォ・ムセッティに
完敗するなど、本調子には
遠かった。

初勝利のあと
「勝てたのが大きい。
まだ完璧ではないが、
1つずつよくなっていけばいい」
と話したように、

まずは多くの試合をこなして
心技体を元の状態に戻すことが
必要だった。

しかし、わずか15ゲームを
プレーしただけで大会を
去ることになった。

思うように動かない体と、
コートに収まってくれない
ボールに対する苛立ちを
なんとか抑え込み、
最後まで勝利を
目指したことだけが収穫か。

22位はカムバック後の
対戦相手では最上位。

グラウンドストロークは力強く、
人一倍の粘りもあって、
手探り状態の錦織のかなう
相手ではなかった。


根本はショットの感覚がまだ……

気になったのは動きの鈍さだ。

相手の攻撃に対する反応が
ほんの少し遅れる。

ショットに対する読み、
すなわち、頭の中に
刻んだデータと相手の
所作から導き出す
予測が十分に
機能しなかったのか。

3週続けて大会に臨んだ
疲れもあったと思われる。

パンデミックによる
ツアー中断の時間を使い、
トレーニングを積んだが、
自身のウイルス感染で
体力の蓄積を減らしたのかも
しれない。

ウイニングショットを
決め損なう場面も目立ち、
チャンスを何度もふいにした。

試合勘という曖昧な言葉を
使ってもいいのだが、
根本はショットの感覚が
万全でない、
したがって自分のプレーに
自信がない、というところに
行き着く。


右ひじの違和感とフォアハンドの不安

復帰後の4試合では、
フォアハンドでもバックハンドでも、
ラケットヘッドを加速させて
ピシャッと叩く感覚が見られない。

本来のヘッドスピードが出ていれば
自然にトップスピンがかかり、
ボールを押さえ込めるのだが、
その感じが出てきていないようだ。

意図的に順回転を増やすか、
こわごわ振って
(だからヘッドが走らず、
スピンがかからず)大きくアウト、
そんな場面が多い。

しっかり叩けているショットも
あるが、散発的で、競った場面では
自信のなさが顔を出した。

ハンブルクの開幕前には
「右ひじはまだちょっと
違和感があるが、
すごく良くなってきている」
と話した。

後半に比重を置いたコメントだが、
違和感があるにはあるのだ。

それもフォアハンドの
不安につながっていると思われる。

違和感が消えないなら、
それをひとまず受け入れ、
感覚のズレを修正し、
ショットの成功例を
増やして自信をつけていく
しかない。


2018年の完全復調も7カ月かかっている

思えば、右手首の故障から復帰した
18年も、1月のニューポートビーチでの
復帰戦から完全復調まで、
実に7カ月かかっている。
「復調」とは全米の4強入りを指す。

この年は4月のマスターズ1000、
モンテカルロで準優勝しており、
これをもって復調と見る向きもあるが、
本人はその時点でも悪い感触は
「全然消えていなかった」と言う。

いわく、フォアハンドが打てず、
準優勝はバックハンド1本で
勝ち取ったものだった。

シーズンオフのインタビューでは
「復帰したころが0とするなら、
100になったのはUSオープン
(開幕は8月末)くらいでした」
と明かしている。

もっとも、100%にはるか
及ばない時期にマスターズ1000で
準優勝、さらに7月の
ウインブルドンで初の8強入りを
成し遂げてしまうのが錦織の
非凡さなのだが。


「もっとネットに出たい」という方向性

当時と故障の部位は違うものの、
あのとき半年以上かけて取り戻した
感覚が、3大会で戻ったとしたら
出来すぎだろう。

ハンブルクの開幕前に
「今年は一歩ずつ。
フィジカルもテニスも100%に
戻るには時間がかかるのは
間違いない」と話したように、
きっかけを求めつつ、
長期戦も覚悟しているのが現状だ。

もちろん、漫然と時を
待っているのではない。

数試合しただけだが、
プレーの上で変化も見られる。

ツアー離脱中、新たに契約した
マックス・ミルヌイコーチの
指導なのか、ネットを取る
頻度が増えている。

復帰後初勝利となったローマの
1回戦では、2セットで
14回ネットを取り、
12回が得点につながった。

敗れた2回戦では、21回ネットを
取って14回得点した。

あとで
「少し出すぎたかもしれない」
と話したが、
「もっとネットに出たい」と
いう方向性は明確だ。

ガリンもその1人だが、
若い世代を見回せば、
おしなべてストロークは力強く、
かつ粘り強い。

打ち負かすには、
ネットプレーを含めた
総合的な技術力が問われる。

そもそも錦織は男子ツアーでも
有数のネットプレーヤーなのだ。


ファーストもセカンドサーブも打ち分けて

もう1点、これもミルヌイコーチの
指導による変化と思われるのが、
サーブのコースの打ち分けだ。

4試合を見ただけだが、
ファーストサーブも
セカンドサーブも、
以前に比べ、きっちり
コースを打ち分けている。

データのサンプル数が少なく、
あくまでも参考程度に
とどめるべきだが、
見た目の印象を補足する
データもある。

以下は今季の数字と、
1シーズンほぼフルに参戦した
2018年との比較
(ATPツアー公式サイトより)だ。

アドコートでの
ファーストサーブでは、
ワイドに打ったケースが
64.9%(18年は48.5%、以下同)、

Tエリア(いわゆるセンター。
サービスラインとセンターラインが
「T」の字に交わる区域)が29.7%(35.8%)、

ミドル(サービスボックスを
3分割した中央)が5.4%(15.7%)――
ミドルを減らし、左右への
打ち分けを優先している。

決して得意でなかった
ワイドへのサーブが増え、
しかも79.2%のポイント
獲得率に結びついている。

これはサーブ自体の改良の
成果でもあるだろう。

次にデュースコートでの
セカンドサーブ。

これをワイドに打ったケースが
50.0%(19.0%)、

Tエリアが39.3%(60.1%)、

ミドルが10.7%(20.9%)――
Tとミドルが大きく減り、
ワイドが増えた。

ファーストサーブで効果を
見せるワイドサーブを
セカンドサーブでも
使おうという狙いか。

センターからミドルを狙い、
高く弾ませて(右利きの)
バックハンドの高い打点で
打たせるセカンドサーブに
頼っていたのが過去の錦織だが、
相手のフォアとバックに
打ち分けようという意図も
見てとれる。

また、アドコートで
セカンドサーブをTに打つ
ケースも33.3%と、
18年の15.6%から倍増している。

デュースコートでの打ち分けと
同様の狙いか。


ぜひ復調のきっかけをつかむ大会に

繰り返すが、今季分は
データ数が少なく
(全試合を網羅していない)、
しかもその中に左利き選手との
対戦を含んでおり、
数字の推移がそのままプレーの
変化とは言えない。

ただ、コースを打ち分ける
という傾向を読み取るのは
間違いではないだろう。

サーブ&ボレーを得意と
していた新コーチの後押しで、
ファーストサーブ、
セカンドサーブとも、
仕掛ける機会は今後増えると
予想される。

ネットプレーも同様だ。

こうして引き出しが増えれば、
戦略家錦織としては、
それだけでプラスになる。

全仏オープンは
コロナ禍で日程が大きく変わり、
例年より4カ月遅れの開幕となった。
錦織にとっては13カ月ぶりの
四大大会だ。

確かに100%にはほど
遠い仕上がりだが、
18年のモンテカルロや
ウインブルドンの例もある。

復調のきっかけをつかむ大会、
願わくは、錦織がその非凡さを
知らしめる大会になればと思う。

(「テニスPRESS」秋山英宏 = 文)



Number Web 9/26(土) 17:01配信

最終更新:9/26(土) 17:01

https://news.yahoo.co.jp/articles/587968e62321b377ad79acf61ced0eddf329b081?page=1
https://news.yahoo.co.jp/articles/587968e62321b377ad79acf61ced0eddf329b081?page=2
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