SSブログ

倉科カナ「お休みの日は何もしません」 芝居にのめりこむストイックさの裏で〈週刊朝日〉 [倉科カナ「お休みの日は何もしません」]

倉科カナ「お休みの日は何もしません」
芝居にのめりこむストイックさの裏で
〈週刊朝日〉



倉科カナ「お休みの日は何もしません」.GIF
倉科カナ [撮影/写真映像部・高野楓菜、ヘアメイク/
草場妙子、スタイリング/道端亜未](dot.)



コロナ禍で全公演中止になった舞台が、
この5月に同じスタッフ、ほぼ同じ
キャストで上演される。

中止が悔しくて号泣したあの
日から2年。

その間に、倉科カナは、
長いトンネルを抜けた。



*  *  *

2年と少し前のことだ。

大好きな演出家と憧れの題材に
巡り合い、しっかり準備をして
臨んだ舞台「お勢、断行」だが、
初日目前に、
全公演が中止になった。

ゲネプロと呼ばれる
本番さながらの通し稽古のあと、
倉科さんは人目も憚らずに泣いた。

悔しさと悲しさで、
涙が溢れて止まらなかった。

「お稽古に入るまでは、
自分は俳優として何ができるのか、
何を求められているのかがわからずに、

長いトンネルに入っているような
感覚でした。

私の世代は個性的な女優さんが
多いので、

『人は人、私は私』
とわかっていても、

“自分にしかできないことは?”

“私らしさって何?”

みたいなことを考え始めると、

こんがらがってしまって……。

そんな中、大好きなお芝居に
没頭できていたのに、

せっかくの作品をお客さんに
お見せすることができなかったのが
残念で、悔しかったんだと思います」

2009年にNHK連続テレビ小説
「ウェルかめ」のヒロイン役で
注目されて以来、

コンスタントに映像作品の
出演が続いていた彼女だが、

実は、演劇こそが、
「芝居をやっていてよかった」
と実感できる場所だという。

「コロナ禍で、いろんなお仕事が
ストップして、ステイホームを
余儀なくされたとき、

『何をしようか?』って考えて、
世界史の勉強をすることに
したんです。

なぜかというと、
麻実れいさんと野村萬斎さんが
出演されていた舞台の

『オイディプス王』を観て、

ギリシャ悲劇を読みたく
なったから(笑)。

作品自体はすごく面白かったけれど、
『ギリシャ悲劇やギリシャ神話、
もっと言えば、ギリシャ神話が
生まれた背景を勉強したら
もっと舞台に深く入り込める』
と思った。

それで、
ローマ帝国ができる
前ぐらいから勉強し
始めました」

緊急事態宣言が解除され、
また仕事に邁進する日々が
戻ってきた。

でも、
「自分に求められているものは
何なのか?」
という疑問は消えぬまま。


「仕事が再開したとき、
あらためてマネジャーさんとも、

『こっちの方向で行きましょう』
という明確な目標を設定しました。

映画『女たち』で演じた
香織というキャラクターに
合わせて、髪を40センチカット
したり……。

翌年には舞台も2本──
こまつ座さんの『雨』と、
『ガラスの動物園』と
いう作品に関わって、

井上ひさしさんと
テネシー・ウィリアムズの
“言葉”に、いろんな場面で
心を揺さぶられました。

基本的に、目の前にあることを
一生懸命やるというスタンスは
変わっていないんですが、
この2年の間に、長いトンネルを
抜けたような感覚があります」

その、昨年出演した2本の舞台での
演技が認められ、倉科さんは
今年2月、第29回読売演劇大賞の
優秀女優賞を受賞した。

「元々、自分で自分を肯定するのが
苦手で(苦笑)。

お芝居をやっていて、
褒めていただくことがあっても、
今までは『お世辞なんだろうな』
ぐらいにしか思っていなかった。

それが今回賞をいただいたことで、

初めて、
『私がやってきたことは
間違いじゃなかったんだ』

『迷ったことも悩んだことも、
すべては無駄じゃなかった』

と思えた。

最初は、審査員の皆さんが
私のことを知ってくださっているんだ
ということが驚きでしたけど(笑)」

自分の成長について、
自覚するのは難しい。

でも、今回の受賞によって、
昔は持ち得なかった何かを、
確実に得られている実感が
あった。

「もちろん、失ったものもあると
思うんです。

でも、この2年間は明確に、
何かを掴めた確信がありました。

とくに舞台に関しては、
キャリアのためというより、
ただ楽しいからやっていて、

私にとっては癒やしの
場なんです。

自分が好きでやっていることで、
人に認めてもらえるなんて、
こんなに嬉しくて、
ありがたいことはないですよね」

舞台の面白さについて聞くと、

「お稽古のときに、
私だけでなく周りの
俳優さんのお芝居が、
突然パッと花開くような
瞬間があることです」

と、顔をパッと輝かせた。

「お稽古って、役や作品を
探求する場なので、
そこにいるだけで、
自分の芝居の純度が
高くなっている
感じがするんです。

余計なことを遮断して、
ただ役に没頭していると、
それまで見えていなかった
ものがパッて見える瞬間がある。

そういう体験をすると、
『ああ、芝居をやっていて
よかったな』と思う。

だからお芝居が好きだし、
だから続けられるんです」


2年前に中止になって悔しい思いを
した舞台「お勢、断行」が来月、
2年前とほぼ同じキャスト、
同じ劇場で上演される。

中止になってすぐ、「
2年後に同じメンバーで
やりましょう」と
スタッフが動き、
キャストも、
スケジュールを調整した。

江戸川乱歩の
「お勢登場」を原案とし、

倉持裕さんが作・演出を務める。

倉持さんは公演チラシに、

「あれからおよそ2年。
ウイルスから派生した
様々な問題に関し、
世界中で対立が生まれ、

大勢がそれぞれの立場で
正義と悪を生み出した。

これは善悪を巡る芝居である。

当時より鮮明に映えると思う」
とのコメントを寄せている。

「舞台は、他のエンタメに比べたら
規制が少ないので、社会の問題に
対して、何らかのメッセージを
投げかけやすいメディアだと
思います。

それに、舞台では大きな嘘が
つけます。

シンプルなセットでも
異国に見せることができるし、
過去や未来も思いのままに
行き来できます。

観る側にとっても、
すごくイマジネーションが
広げられる場所なので、

本当は、もっと幅広い世代が
観てくれたらなぁなんて
思ったりもします。

もしも私・倉科カナという
俳優に興味を持ってもらって、

そこから演劇に興味を持って
くださる人が増えたらどんなに
嬉しいか。

私は、大好きな演劇に
貢献できるのなら
何だってする覚悟です。

大げさじゃなくて、
本気でそう考えています」


◆誰かの顔がほころぶ瞬間が好き

一途さゆえに、ストイックに
なりやすい性格だった。

休みの日も、映画や舞台を観ては、
「ああ、この人はこういうお芝居を
されるのか」などと、

つい考えてしまう。

四六時中、芝居から抜ける暇が
なかったのが、ある時期からは、
自分を甘やかすことも覚えたらしい。

「お休みの日は何もしません。
昼からお酒を飲んで、
家事もせずにデリバリーを頼んで、
時間を浪費する(笑)。

それが一番贅沢なお休みの日の
過ごし方ですね。

私、オンとオフのメリハリが
すごくあって、オフのエンタメは
アニメ限定。

アニメのお芝居は別次元だから、
頭を空っぽにして、
トリップできるので」

自分が、ストイックになりやすい
こともわかっているから、

コンディションをキープするための
メニューにも、逃げ道を作っている。

「身体が硬くなった」と思ったときに、
実践できるエクササイズに
バリエーションを持たせているのだ。


「ジムに行くことも多いですが、
ジャイロトニックという病気や
けがのリハビリに使われている
運動を取り入れることもあります。

ヨガや水泳、太極拳、ダンスなどの
いいとこ取りで、インナーマッスルを
鍛えてくれる。

俳優は、緊張感のある仕事なので、
放っておくとすぐ体がこわばってしまう。

見た目も大事なお仕事といっても
表面的な筋肉だけをつければ
いいわけじゃないんですよね。

ジム、ジャイロ、バレエと
いろんな方向からアプローチしても、
言っていることは一貫しています。

いろいろなことにトライしていると、

『今日はジムの気分じゃないな、
じゃあジャイロ行っちゃう?』
みたいなことができるから、
気分的にもあまり自分を
追い込まずにいられます(笑)」

モチベーションになっているのは、
演出家をはじめとするスタッフや、
家族、お客さんの喜んでいる
顔なのだそう。

「仕事を頑張って、
金銭的に余裕ができると、

家族においしいものを
食べさせてあげられたり、

見たことのない景色を
見せてあげられたり。

『また、こんな顔が
見られるように頑張ろう』
って思える。

お芝居の稽古や本番が好きなのも、
誰かの顔がほころぶ瞬間に
立ち会えるから。

私は自分のためだけには
頑張れない。

だから常に誰かが喜ぶ姿を
イメージしながら、
目の前のことに取り組んでいます」


(菊地陽子 構成/長沢明)

倉科カナ(くらしな・かな)/
1987年生まれ。熊本県出身。

2005年、SMAティーンズオーディションで
グランプリを獲得し芸能界入り。

09年、NHK連続テレビ小説「ウェルかめ」
のヒロインに選ばれる。

「サスティな!~こんなとこにもSDGs~」
(フジテレビ系)のMCを務めるほか、

Paraviで先行配信中の
「寂しい丘で狩りをする」が、
22日からテレビ東京でオンエア。

NHK総合ドラマ10「正直不動産」に
出演中。



倉科カナ「お休みの日は何もしません」-1.GIF
倉科カナ [撮影/写真映像部・高野楓菜、ヘアメイク/
草場妙子、スタイリング/道端亜未](dot.)



※週刊朝日  2022年4月22日号



AERA dot. 4/15(金) 11:00配信

最終更新:4/15(金) 15:20


https://news.yahoo.co.jp/articles/8b555187fc659fb167ee69cc5788581acbadf9dd?page=1
https://news.yahoo.co.jp/articles/8b555187fc659fb167ee69cc5788581acbadf9dd?page=2
https://news.yahoo.co.jp/articles/8b555187fc659fb167ee69cc5788581acbadf9dd?page=3
https://news.yahoo.co.jp/articles/8b555187fc659fb167ee69cc5788581acbadf9dd?page=4






















nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。